【感想】『会社に人生を振り回されない 武器としての労働法』ささきりょう著

ささきりょう『会社に人生を振り回されない 武器としての労働法』を読んだので感想をまとめます!

会社に人生を振り回されない 武器としての労働法 [ 佐々木 亮 ]

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会社で働く人なら全員知っておいた方がいい労働法の基礎知識が書かれていました。
一通り読んでみての感想をまとめると「めちゃくちゃ読みやすい辞書」。
へええ、こんな風に法律で決まっていたんだ! と学べることが多い本でした。

なんとなく耳にしてはいたけど知らなかったことが知れる

例えば、正社員の定義って分かりますか?
正社員とは、次の3要素を満たす働き方のことです。

1.無期雇用である
2.フルタイムで働いている
(フルタイム=会社で定められている1週間当たりの所定労働時間)
3.直接雇用である
(派遣社員とかではない)

なんとなく「正社員は安定している」とは耳にするものの、これらの定義は知らなかったという人も多いのではないのでしょうか。
社内では「正社員」と呼ばれていたとしても、契約期間に定めがあるならそれは正社員じゃあないです。

このように、今まで知らなかった法律を知ることができます。
これまでなんとなくテレビのニュースや周りの人たちとの会話で耳にしてきた「正社員は安定してる」「教員のブラック労働が問題になっている」「派遣社員は不安定」といった言葉の答え合わせができます。

初めて知って驚いたこと

いくつか初めて知って驚いたことがあったので、それらについても話します。
まず、フリーランスには労災が適用されないから、自分で民間の保険に入っておいた方がよいことが一つ。
それから、派遣先の企業が派遣社員を採用することは、派遣元企業には阻止できないことがもう一つ。もしも契約事項に「派遣業務終了後に、派遣先企業の社員にはなれない」と書いてあったら、それは違法だそうです。

そして、公立の幼小中高などで働く学校の先生には、勤務時間の管理が難しいという理由から、残業手当や休日勤務手当が支給されません。その代わりに、給特法により給料月額の4%の額が教職調整手当として支給されています。
このことを初めて知っためおばーどは、


工工工エエエエエエェェェェェェ(´д`)ェェェェェェエエエエエエ工工工


の世界……。
なんとなく学校の先生って持ち帰り仕事が多そうだなとか、クラブ活動の指導で休日も働いているなとか思っていたけど、こんな決まりがあっただなんて知らなかったです。
4%って、少なすぎるでしょ……。
給特法を改正する動きもあるようですが、中には改正してほしくない教職員もいるそうです。
というのも、教職員の中には部活の指導に打ち込みたい者や、緩かった勤怠管理が厳しくなるのではという懸念をもつ者もいるからです。というわけでなかなか改正までの道のりは長そうです。

非正規公務員は弱い

日本の裁判所では公務員は”雇用”されているのではなく”任用”されていると扱うそうです。
“任用”つまり民間の労働者が持っている権利と、公務員が持っている権利は違います。
公務員といっても職種は様々で、事務職、公立の教職員、警察官、消防官、保育士などがあります。
公務員は一度任用されれば、よほどの事故や事件でも起こさない限り辞職にはなりません。
よく「公務員は安定している」と耳にしますが、民間とはそもそも法律が違ったのですね。

しかし、有期で働く非正規公務員はまったく様相が異なっていて、長年働いていても「来年は任用しません」と言われると、それを覆すことはまずできないそうです。
これが民間であれば、長年雇用されている場合はしっかりとした理由がないと雇止めできないことになっています。
なので、非正規公務員は民間の非正規労働者よりも、ともすれば弱い立場に置かれているのだと感じました。

残業について

この本では残業時間の計算方法や、企業が残業をさせてもよいとされる上限時間についても説明されています。
残業をする可能性がある全人類は読んだ方がいいと思います。

詳しい説明はここではしないのですが、私が驚いた決まりについて少し話そうと思います。
それは、36協定(サブロク協定)の「特別条項」という例外を使うことによって、年間最大960時間もの時間外労働が可能になるという決まりのことです。
960時間を12か月で割ると80時間。これは過労死ラインと同じです。
死んでもおかしくないラインまで働かせることが合法だなんて、初めて知りました。
まあ、80時間どころか、知人には「毎日15時間くらい働いているよ」と言う人もいるので、世の中の企業の実態というのはもっと凄まじいのでしょうけど……。

最後に

求人票を見るときに気をつけた方がいいこと、労働問題の相談ができる窓口、弁護士に依頼するときの相場についても巻末に載っていて、実用的かつ親切な本だという印象を持ちました。

労働法のこととか、相談窓口のこととかって義務教育でも教わらないし、自分の身を守るために重要な事柄であるのにも関わらず地味にアクセスしづらい情報なんじゃないでしょうか。

そうしたことを分かりやすく、かつ網羅的に教えてくれるこの本は、本当に勤め人をやる全人類が読んだ方がいいと思いました。

あえて言うなら、育児や介護で時短勤務をするケースや、育休産休まわりの解説がなかったのが残念でした。
父親、母親に関わらず育児と仕事のはざまで悩んでいる人は多いでしょうし、介護のためフルで働けない人もたくさんいますし、特に父親が育休を取得する時代の流れが出てきたのは最近のことなのでその辺りの困りごとや疑問も多いかもしれず、そういった情報が載っていないのはちょっと惜しいかなあという感じです。

話は逸れるのですが、それにしても、本にも書いてあった通りプラットフォームをめぐる法律がまだ整備されていないことは気になります。
これからの時代は、というかもう既に求人情報を多数掲載するサイトとか、フリーランスに発注者が仕事を頼めるサイトとかが栄えているわけです。
プラットフォームが強い力を持つ現代において、このあたりの法律がどうなっていくかも今後気をつけて見ていきたいなあと思いました。

とりあえず、感想をまとめると。

社会で人と仕事をする全ての労働者は読むべき

以上です!

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